WaSabi-News #111

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★揺れ動くリオ治安問題
「コンプレクソ・ド・マレー」

リオのアントニオ・カルロス・ジョビン国際空港から市内中心を目指して車で移動する際に、高速道路リーニャ・ヴェルメーリャを走る。空港を出発して10分ほどゆくと視界が開け、左手にグアナバラ湾、右手に広大なスラム街(ファヴェーラ)を一望することができる。

 

そこには複数のファヴェーラ群が複雑に共存している。麻薬犯罪組織コマンド・ヴェルメーリョの本拠地があった一大ファヴェーラ群「コンプレクソ・ド・アレマォン」もその一つ。2010年11月のリオ戦争では、州政府は警察・海軍・陸軍の編成部隊2600名をアレマォンに送り込み武装勢力を一掃、その後はUPP(治安維持部隊)が駐屯している。

 

UPP第1号(ドナ・マルタの丘が誕生したのは2008年11月のこと。以降、市内中心に近いファヴェーラから次々と武装勢力を追放し、現在は合計30のUPPが各ファヴェーラで治安維持活動を行っている。治安回復後は、生活インフラの整備が進められ、生活環境は着実に向上している。最初は不信感を抱いていた地域住民も今ではUPPの活動を信用しサポートするようになった。

 

州政府は目下のところ、「コンプレクソ・ド・マレー」の治安回復オペレーションの入念な準備を進めている。すでに治安回復した「コンプレクソ・ド・アレマォン」に隣接する16のファヴェーラが集まった一大ファヴェーラ群で、人口は約13万人。高速道路リーニャ・ヴェルメーリャに沿ってレンガ製の粗悪なスラムが広がり、グアナバラ湾の汚泥から発生する悪臭が終始一帯に漂う。国際空港から市内への通過点にあり、リオを訪れる外国人観光客がネガティヴな初印象を抱くポイントになっている。

 

「コンプレクソ・ド・マレー」の治安回復にあたって、いくつもの問題点が指摘されている。ひとつ目は、犯罪組織による武装勢力。現在は2つの麻薬密売組織と1つのミリシア(非合法の用心棒団体)が頻繁に縄張り争いを繰り広げている。さらに別の麻薬密売組織も侵入しようとしており、地域一帯には殺伐とした緊張感が漂う。

 

ふたつ目は深刻な社会問題となっている麻薬常習者の集会。「コンプレクソ・ド・マレー」の一部パルキ・ウニアォンでは、昼間から多くの麻薬中毒者が幹線道路脇で麻薬を常用しており(参照記事)、当局は決定的な解決策を見いだせないままイタチごっこが続いている。

 

また、「コンプレクソ・ド・マレー」には約40ものNGOが駐在し、地域住民の人権擁護などを訴えている。警察が捜査令状なしで住居に侵入することにも強く反対しており、他ファヴェーラで行われてきた治安回復のプロセスとは異なる様相をみせている。

 

「戦争をプロセスとした治安回復は問題の解決にはならない。まずは地域住民の安全を守らなければならない。UPPが活動する前に、住民代表との対話が必要だ。バイクタクシーやバイリファンキを監視することは警察の役割ではない」(NGOファヴェーラ監視団代表ジャイルソン)


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「モーホ・ダ・プロヴィデンシア」

リオ旧市街にある「モーホ・ダ・プロヴィデンシア」は、 リオに最初に誕生したファヴェーラとして知られる。19世紀後半にブラジル北東部で“カヌードスの乱”が起こったため、政府は軍隊を送り内乱を鎮圧。傭兵 たちは1897年にリオへ帰還したものの、政府が約束した報酬を反故にしたため、港湾地帯にあった丘を不法占拠し暮らすようになった。その丘には、“カ ヌードスの乱”の抗争地帯に自生していたファヴェーラという名の植物に覆われていたので、「モーホ・ダ・ファヴェーラ」と呼ばれるようになり、後にスラム 自体を指す言葉となった。

 

長年、犯罪組織に支配されていたが、2010年に治安回復してからUPP(治安維持部隊)が駐屯している。リオ市は「モーホ・ダ・プロヴィデンシア」を中 間に経由し、シダーヂ・ド・サンバ(カーニヴァルの山車工場)とセントラル鉄道駅を結ぶゴンドラ施設の建設を進めている。ゴンドラの全長は721メートル で、45のゴンドラが稼働し、1時間で3千人をトランスポートする。リオ市は6月コンフェデ杯前の完成を目標としている。

 

一方で住民の立ち退き問題が暗礁に乗り上げており、現在までに合意に至ったのは全体の約3割という状態。急激なファヴェーラの近代化に、古くからの住民は 驚きと戸惑いを隠せないでいる。ゴンドラによって観光地化することも見込まれている。また、リオ市は港湾の再開発に力を入れており、一帯の地価は高騰しバ ブルと化している。

 

「モーホ・ダ・マンゲイラ」

W杯が行われるマラカナン・スタジアム脇にそびえる丘、モーホ・ダ・マンゲイラから武装勢力が追放され、UPP(治安維持部隊)が駐屯を開始したのは2011年11月のこと。しかし、1年数ヶ月が経った現在も、武装勢力の姿こそ見えないものの、モーホ・ダ・マンゲイラの住民は犯罪組織によって恐怖支配されている。数日前に 犯罪組織メンバー1名とエスコーラ・ヂ・サンバ関係者2名が暗殺された事件によって、マ ンゲイラの丘全体が不安と緊張に包まれている。犯罪組織は住民に箝口令をしいており、密告がばれると処刑されるため、住民は警察や報道陣に一切口を閉ざし ている。UPPはパトロールの人数を増やしているが犯人逮捕には至っておらず、マンゲイラがいまだに犯罪組織によって実質支配されていることを知らしめ た。

 

モーホ・ダ・マンゲイラは数 十年に渡って犯罪組織に支配されてきたため、他の治安回復したファヴェーラとは異なり、生活社会の隅々まで恐怖支配が染みついている。また、マンゲイラは サンバとのつながりが非常に強いのも特徴。今回の殺人事件は、エスコーラ・ヂ・サンバ「エスタサォン・プリメイラ・ヂ・マンゲイラ」の会長選をめぐる内紛 に端を発しており、イヴォ・メイレリス現会長一派と犯罪組織がバックアップする反対派との対立が背景にある。巨額の運営資金の一部が犯罪組織へ流れていた 可能性もあり、当局は現会長を含む関係者から事情徴収を行っている。